2026年新年の挨拶

東京学芸大学辟雍会会長  馬渕貞利

 辟雍会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。

 本年も辟雍会がさらに発展する年となりますように、そして、皆様にとって良き年となりますように、ともに心を新たに頑張ってまいりたいと思います。

 最近、地球温暖化の影響が顕著に表れるようになり、前例のない大きな自然災害が世界の各地で起きています。その上、地球の地殻変動までが活発化して地震や火山噴火のニュースが後を絶ちません。辟雍会では、昨秋、気象学者の立花義裕先生をお招きしてホームカミングデーの講演をしていただきましたが、先生のお話しによると、日本は地球温暖化による影響をもっとも受けやすいところなのだそうです。そのような土地に暮らす私たちは、自分の身を守るためにも地球温暖化を防止する活動に率先して取り組まねばなりません。こうした活動の一環として、私たちは災害のリスクを減らす活動を意識的に追及していきたいと思います。そして、学芸大学から全国に向けて「地球温暖化防止・災害リスク極小化行動プラン」のようなものを発信することを夢見ています。折しも昨年末の辟雍会運営委員会におきまして「辟雍会学生表彰規程」を施行することが決まりました。誰もが注目する行動プランの作成者をこの規程に基づいて表彰できれば、こんな素晴らしいことはありません。

 ところで、最近、日本でも排外主義的な言動が目立ってきています。一部の人の不法行為などを例に挙げ、結果的には相対的な弱者をまとめて攻撃するような行為は厳しく批判されなければなりません。こうした行為は往々にして、子供の世界で深刻化している「いじめ」を増幅するものにもなりかねません。今日の世界では、あらゆる事柄に対して地球大的な思考が要求され、あらゆる場所でインクルーシブな立場が求められています。前途に希望が持てず鬱屈した気持ちがあるからと言って、排外主義を声高に叫ぶような行為を英雄視することには、私たちはもっと慎重であるべきです。世界の各地で民族紛争が激化しているのも、こうした動きと無縁ではありません。知らず知らずのうちに紛争の渦に巻き込まれて多くの人々が苦しい生活を強いられ、日々貴い人命が失われています。そんな中で、新年早々からアメリカの大統領が極端に侵略的で暴力的な言動を繰り返しています。私たちはこうした暴挙を決して許してはなりません。

 2004年に日本の国立大学が法人化されて以降、一貫して国立大学法人に対する国からの交付金が削減され続けた結果、東京学芸大学は今や、他の国立大学や私立大学と同様に大学の存立自体が危ぶまれる危機的事態に直面しております。こうした非常事態を打開するためには、何よりもまず国の教育政策の抜本的見直しが必要になっておりますが、辟雍会といたしましても、東京学芸大学に対する運営費交付金が大幅に増額されることを願ってやみません。東京学芸大学の研究環境が極端に劣悪化し、大学教育の質が著しく低下しているこの現実を、真の意味で日本の教育立国を目指す私たちは看過することができません。

 それと同時に、私たちにはさまざまな形で東京学芸大学に対する支援を強化する方策が必要になっております。これまでも辟雍会では東京学芸大学学生の教育環境整備に努めてまいりましたが、今後は学芸大学がフラッグシップ大学としての個性をさらに発揮するためにも何がしかの協力ができないかを検討していきたいと思います。ご承知のように、辟雍会は学芸大学の全ての構成員を会員とする組織です。したがいまして、学芸大学の教職員が意気高く働けるように支援していくことも本会に課せられた重要な責務の一つであり、本年度はこの面でも新機軸が立てられればと考えております。ただ、そのためには全ての大学構成員に本会の存在意義を正しく理解していただく必要があり、この面でもたゆまぬ努力が求められております。

 今年の干支は午年です。これにちなんでよく思い起こされる言葉に「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。これは中国前漢の時代に編まれた『淮南子(えなんじ)』の巻18人閒(じんかん)訓(くん)」に収録されている逸話から生まれた言葉です。一般にこの言葉は、北方民族との攻防の地に住む人が馬と織りなす関係から、人の幸・不幸は転変ままならぬものであることを説くものと解されています。しかし、落馬して骨折したことによって北方民族の襲撃を逃れることができたという最後の一節は、どのような困難にも強い意志をもって対応することの重要さを示唆するものとなっています。この故事を踏まえて考えてみますと、私が上記しました三つの事柄はどれも気の滅入るような話ですが、私たちにとって禍のようにみえるこれらの事柄も、すべて前向きに強い意志をもって対応すべきことを求めているように思われます。

 どうか、本年もよろしくお願いいたします。

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