辟雍NEWS
令和7年度 学校等訪問事業④ シュタイナー学園高等部
東京学芸大学と辟雍会の共催事業・学校等訪問事業「先輩たちのいる学校を訪ねよう!」の4回目はシュタイナー学園高等部。場所は八王子市を超えて山梨寄りの相模原市緑区、旧藤野町。JR藤野駅を間に挟んで東西に初等部・中等部と高等部に分かれています。いずれも旧小学校の校舎を改造して学校運営を行っています。1987年に都内のビルの1室で誕生した「東京シュタイナーシューレ」から始まり、2004年に内閣府の「構造改革特別区域法」(特区)を活用して旧藤野町と提携して学校法人として出発しました。高等部は2012年に神奈川県知事より認可されました。
シュタイナー教育はドイツで始まり、100年以上の歴史を持ちます。自立した自由な人間の教育を目指しています。特色あるカリキュラムの一つが、エポック授業。主要教科を中心にテーマ別に毎日、朝の学びに適した時間帯に105分間を充て、じっくりと授業に向き合うものです。本学からの参加者4名は二人ずつ2組となって、一組は美術史(高校1年生)、もう一組は数学(射影幾何学)の授業(高校2年生)を見学しました。前者はデューラーの『十三歳の自画像』を大画面のテレビモニターに映し、先生が生徒らにその絵の特徴を対話形式で、詳細に観察させながら、紹介されました。こんな授業を受けたらどうしても自画像が描きたくなるというようなむずむずする時間でした。後者は「デザルクの定理の応用」というテーマでしたが、聞いたことのないものでした。三角形の窓から差し込む一点からの光が床面にどのような図形となって写るかを説明していました。黒板に貼り付けた住宅模型をペンライトで照らして、写し出される図形がペンライトの位置で変わることを視覚的に確認し、まずは感激。続いて、B4サイズの触り心地の良い紙に、点光源や窓枠、床面が二次元平面に大きく書かれたところに、各自が爽快に誘導されながらアナログ的に書き加え、作図し、いつしか課題を解決していました。授業が終わると、生徒らは計算結果を各自の大きな作品ファイルに、たくさん詰まったその次の頁に、折らずにしまっていました。
掃除の時間を挟んで、午前中の残りの時間は、専門科目と呼ぶ、いわゆる普通の授業を見学しました。数学(高校2年生)では、一次関数の授業でしたが、終わり際の時間に五角形を元にして描く軌跡のクイズ(執筆時に筆者未解決、じっくり紙に定規で書きたいです。)や正方形の上面をもつチョコレートケーキを三等分する話(筆者解決)なども聞かせてくださいました。あちらこちらから、和やかに飛び交う生徒たちの発言は、先生と息の合った楽しいおしゃべりのようでした。また、音と言語を身体によって表現する「オイリュトミー」(美しい調和のリズム)の授業(中学3年生)も独特でした。イメージは「舞踊」に近いのですが、「音」を表現するということで、音階を手の動きで表現することを基本としています。この日はベートーベンの「歓喜の歌」と『古事記』の一場面を題材にした表現活動でした。単色の衣装にバレーシューズを履いて、クラスの皆で膨らんだり窄まったり。指導するダンサーのような先生はあちこちを蝶のように移動していましたが、グランドピアノの演奏者の傍らで、校長先生とともに、椅子に座って参観させていただきました。なんとも心が揺さぶられるような、芸術活動に感動を覚え、何故か涙が込み上げました。他にも教室内では織物、工芸など手仕事の学習場面や運動場での石工を見学しました。10人前後の少人数のクラスの中で生徒が臆することなく質問をし、意見交換する様子が見られました。
昼食の時間は、校長先生らがご同席くださり、本学からの訪問者の質問に丁寧に答えて下さいました。
写真1~3は事前挨拶時に撮影したもの、写真4は当日のものです。
シュタイナー教育は教育関係者にとっては非常に興味深いものですが、この日の学生参加者は結局1人。訪問日程が急遽設定されたので周知期間がほとんどなかった事情がありました。引率者は大学から見世千賀子准教授、荒川悦雄教授(辟雍会理事兼任)、辟雍会からは小澤一郎理事でした。(小澤一郎・荒川悦雄)
写真1 シュタイナー学園高等部
写真2 教室の壁は保護者によって新しく板が貼られた
写真3 生徒の手作りの織物
写真4 参加者一同(撮影者を含めて4名)
更新: 2025-10-08