2021会長挨拶

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 辟雍会会員の皆様におかれましては,お健やかに新春をお迎えのことと存じ上げます。
                                      
 昨年は,新型コロナウィルス感染症が広まり大変な1年でした。大晦日には東京での新規感染者数が1,300を超え1日の感染者数として年間で最高となりましたが,それも年明けの7日には2,447と大幅に増え,東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に2回目の緊急事態宣言が発令されました。この感染症の影響は多方面に現れ,東京オリンピックが延期となり,休廃業する飲食店等が増え,最も深刻なのは,医療がひっ迫し医療崩壊が懸念されていることです。本辟雍会も集まっての会議が開催できず,全国代表者会議も中止することを余儀なくされ,活動らしい活動ができない年でした。
 このような中での明るい話題としては,2014年に約3億km離れた小惑星「リュウグウ」を目指して打ち上げられた探査機「はやぶさ2」が,リュウグウ表面で試料を採取して6年間の宇宙旅行を終えて帰還し,投下されたカプセルがオーストラリアで無事回収されたことが挙げられるでしょう。このカプセルの中には,気体と直径1cm大の粒子を含む鉱物試料が入っていました。これらの試料を分析することによって,太陽系誕生の謎の解明に新たな手掛かりが得られる可能性があります。リュウグウ表面の岩石中には、太陽系が生まれた頃(今から約46億年前)の水や有機物が残されていると考えられています。有機物や水に富む小惑星が原始地球に衝突してアミノ酸などの有機物や水が地球に運び込まれ、生命をつくる材料になったとの仮説があります。地球の水はどこから来たのか、生命を構成する有機物はどこでできたのか,すなわち,生命の起源の謎を解く手掛かりも得られる可能性があります。この謎解きの中から,医療に関するヒントも得られるかもしれません。これからの研究に期待するところ大です。
 新型コロナウィルス感染症のワクチンが,従来の開発期間よりずっと短期間で開発され,海外では既に接種が始まり,国内でも近々始まります。鳥インフルエンザが毎年流行し,昨年末には1養鶏場としては過去最多の鶏約116万羽を殺処分したとのニュースがありましたが,人用のインフルエンザ治療薬が鳥インフルエンザに感染した鶏の治療に効果があることを日本人研究者が見つけ,専門誌に発表しました。また,英政府は,日本企業が開発したリウマチ治療薬が新型コロナウイルス感染症治療に有効であることを確認し,集中治療室に入っている患者への投与を開始するとのニュースもありました。新型コロナウィルス感染症治療に有効な新薬も近いうちに開発されるでしょう。
 今は生活が制限され我慢の時ですが,このような厳しい時だからこそ,ワクチンの短期開発のように,新しいアイディアが生まれる可能性があります。教育におけるオンライン授業での工夫もその一つでしょう。辟雍会活動は人と人との繫がりが基礎になりますので,集まる機会が制限されると,なかなか活発化することができません。しかし,今の厳しい状況を,逆に,本会発展の方策を見出す機会と捉えて,辟雍会として何ができるのか,何をしたらよいのか等をじっくり考えたく思います。支部の方々も,コロナ感染症が収束するまで,暫くは集まって親交を深める機会が持てないと思います。支部活動の活性化のためにオンラインの活用を考えるのも一つと思います。「辟雍会通信」はまだ始めたばかりで内容もこれから充実させて行く段階ですが,支部情報の共有に活用していただければと思います。
 今冬は強烈な寒波も度重なって襲来し,各地で大雪の被害が出ています。どうぞ事故に合わぬよう,また,コロナに負けぬよう,十分ご自愛ください。早く,明るく平穏な日が戻ることを祈ります。